「ねえ、ママ、犬を飼いたい!」
ある日突然、子供にそう言われたら、どう答えますか?
嬉しそうな笑顔を見ると、すぐに「いいよ」と言ってあげたい気持ちもありますが、ペットを迎えるというのは、子供にとっても親にとっても大きな決断です。
子供にとってペットは、遊び相手であり、癒しの存在。
そして、命を感じる貴重な経験の場です。
しかし、ペットを飼うことには責任が伴い、そのためには事前に親子でよく話し合い、理解を深めることが大切です。でも、どうやって子供にペットを飼うということの現実や責任を伝えればいいのでしょう?
ここでおすすめなのが「動物絵本」です。
動物絵本は、楽しい物語の中に命の大切さやペットと暮らす現実を教えてくれる貴重なツールです。子供の年齢や興味に合った絵本を選べば、親子で共通の話題を持ちながら、ペットについて一緒に考えるきっかけを作れます。
この記事では、ペットを飼いたいと言い始めた子供と親が、まず取り組みやすい「動物絵本」をテーマに、実際におすすめの本やその効果について紹介します。
ペットを飼う前に考えるべきこと:親としてどう向き合う?
子供の「飼いたい!」にどう応えるべきか?
「犬が欲しい」「猫を飼いたい!」と子供が言い出したとき、多くの親が最初に感じるのは、嬉しさと少しの不安ではないでしょうか。
動物が好きで命に興味を持つことは、子供の成長においてとても良いことです。しかし、ペットを迎えるということは単なる「かわいい」や「楽しい」だけではありません。
食事、散歩、病気のケア、老後の世話まで、ペットを飼うことには長い責任が伴います。親として、その現実をどうやって子供に伝えるべきか悩む方も多いはずです。
ここで一つ考えてみてください。
子供が「欲しい」と言ったとき、それはペットの何に惹かれているのでしょうか?
ただの遊び相手として見ているのか、それとも動物の命の存在に興味を持っているのか。この違いによって、親の対応やアプローチも変わってきます。
子供に「命の責任」を伝える難しさ
小さな子供に「命の責任」を教えるのは簡単なことではありません。
たとえば、子供に「ペットはただのぬいぐるみじゃないよ」と説明しても、具体的なイメージが湧かない場合が多いです。犬や猫が病気になったり、高齢で動けなくなったりする場面を想像するのは難しいでしょう。
実際、ペットを飼った家庭の中には、「子供が全然世話をしない」「飽きてしまった」といった理由で手放すケースも少なくありません。
環境省のデータによると、
この現実を知ると、安易に「飼ってもいいよ」とは言えなくなります。
ペットは家族の一員:親の覚悟も必要
ペットを飼うということは、子供だけでなく親にも大きな責任が発生します。例えば、次のような場面を想像してみてください。
- 突然ペットが病気になり、高額な治療費が必要になった場合
- 旅行や帰省中の世話をどうするか
- ペットの寿命が尽きるとき、家族全員がどう受け止めるか
これらはすべて、事前に話し合っておかなければならない問題です。
特に子供が小さいうちは、どうしても親が大部分の世話を担うことになります。そのため、親自身がペットを迎える覚悟を持つことが大前提です。
それでもペットを迎えるメリットは大きい
もちろん、ペットを飼うことで得られるメリットもたくさんあります。
ペットは、子供にとって情緒的な安定をもたらし、命の大切さや他者への思いやりを育む最高の存在です。たとえば、朝早く起きて犬の散歩に行くことが習慣になれば、子供の生活リズムが整い、体力もつきます。
猫と遊ぶことで孤独感が和らぎ、学校でのストレスも減るという研究結果もあります。
親子でペットを育てる経験は、家族の絆を深める絶好のチャンスでもあります。
ただし、それは適切な準備と教育があってこそ成り立つもの。ここで「動物絵本」を活用するのが、子供とペットについて学ぶ最初のステップになります。
動物との暮らしを学べる!子供におすすめの動物絵本5選
ペットを飼うことは、子供にとって命の大切さを学ぶ絶好の機会です。
しかし、実際に飼い始める前に、楽しさと同時に責任の重さを理解させる必要があります。その助けとなるのが「動物絵本」です。
絵本は、物語の中で現実の問題をやさしく、そしてわかりやすく伝える力があります。さらに親子で一緒に読み進めることで、自然と会話が生まれ、ペットについて深く考える時間を持つことができます。
ここでは、ペットを飼いたい子供におすすめの動物絵本を5冊ご紹介します。それぞれが持つテーマや特徴を通じて、ペットを飼う前に考えるべきことを学んでいきましょう。
1. 『ずっとずっとだいすきだよ』作:ハンス・ウィルヘルム
命の有限を教えてくれる一冊
この絵本は、子供と犬の心温まる日常を描いた物語です。主人公の少年は、自分の犬に「ずっとずっとだいすきだよ」と言い続けます。
して物語の最後、犬が年を取り、命を終える場面が訪れます。子供にとっては「別れ」を初めて意識する貴重な機会となりますが、同時にペットを愛する意味や、大切な存在を失う悲しさも学ぶことができます。
親子での活用ポイント:
- ペットの老化や死について考えるきっかけに。
- 「今、大切な人に感謝を伝えられているかな?」と親子で話し合う場を作れます。
2. 『しろいうさぎとくろいうさぎ』作:ガース・ウィリアムズ
パートナーとしての動物との絆
2匹のうさぎが支え合い、共に暮らしていく物語。この絵本は、動物同士の絆や友情を通じて、「一緒にいる責任」や「パートナーシップ」の大切さを教えてくれます。子供がペットをただの遊び相手としてではなく、「家族の一員」として見る視点を養うことができます。
親子での活用ポイント:
- 「ペットも一人では寂しいかもしれないね」と話を広げて、共感を育てましょう。
- 動物にも気持ちがあることを考えるきっかけになります。
3. 『おじさんのかさ』作:中川ひろたか / 絵:村上康成
動物を守る責任と優しさ
主人公のおじさんは、雨の日でも「かさ」をささないことで有名です。その理由は、動物たちが雨宿りをする場所を奪わないようにするため。この絵本は、身近な行動が動物に与える影響を描き、優しさや配慮の大切さを教えてくれます。
親子での活用ポイント:
- 子供と一緒に「動物を守るために何ができる?」とアイデアを出してみましょう。
- 動物にやさしい行動を日常生活で実践するきっかけになります。
4. 『ふしぎなでんしゃ』作:林明子
ペットを飼う楽しさと現実のバランス
この絵本では、不思議な電車に乗り込む動物たちと主人公の冒険が描かれます。物語の中で、動物たちは自分たちの生活や気持ちを語り、主人公に考えさせる場面があります。楽しいストーリーの中に、「動物との関わり方」を考えさせるメッセージが込められています。
親子での活用ポイント:
- 動物がどんな生活を送っているのか、一緒に調べるきっかけを作りましょう。
- ペットの気持ちを想像する力を育てることができます。
5. 『くまのコールテンくん』作:ドン・フリーマン
責任を持つことの意味をやさしく伝える
この絵本では、コールテンくんというくまのぬいぐるみと少女の交流が描かれています。くまの世話をすることで、少女が責任感を学び、成長していく姿が物語の中心です。絵本を通して、ペットを育てることの「責任」と「達成感」の両方を子供に伝えることができます。
親子での活用ポイント:
- 「コールテンくんが家族になったらどう世話する?」と子供に考えさせてみましょう。
- 自分の役割を決めるシミュレーションにも最適です。
動物絵本で学ぶメリット
動物絵本を読むことは、子供に「命の責任」を自然に教える手段として非常に効果的です。また、親子の会話を深めるツールとしても優れています。
絵本のテーマ | 学べること | 親子での活用方法 |
---|---|---|
命の有限 | 別れの大切さと感謝の気持ち | 今の気持ちを伝える会話を持つ |
動物との絆 | 家族としての動物の見方を学ぶ | 共感や優しさを育む |
動物の保護 | 優しさと配慮の実践を促す | 日常生活での行動に反映 |
動物絵本のメリット
1. 命の大切さを楽しく学べる
動物絵本は、物語を通して命の尊さやペットとの絆の大切さを自然に伝えることができます。特に、小さな子供にとって、絵やストーリーは分かりやすい形でメッセージを届ける手段です。
例えば、『ずっとずっとだいすきだよ』のような絵本では、ペットの老化や死という難しいテーマを優しく描いており、子供に「命には終わりがある」という現実を受け入れさせるきっかけを与えます。
2. 親子のコミュニケーションが深まる
絵本を一緒に読む時間は、親子の対話を促す大切なひとときです。
「この犬はどうしてこうなったのかな?」など、絵本の内容を基にした質問を投げかけることで、子供の考えを引き出しつつ、親自身も子供の思考や感情を知ることができます。
また、絵本を読む時間は、親子の絆を深める貴重な機会にもなります。
3. 責任感を育てるきっかけになる
絵本に登場する動物たちの生活を知ることで、ペットの世話の大変さや、命を預かる責任の重さを子供に教えることができます。
特に、『くまのコールテンくん』のような物語では、主人公が「世話をする」という具体的な行動を通して責任感を持つ姿を描いており、子供が自分にも何ができるか考えるきっかけを作ります。
4. ペットを迎える前の模擬体験になる
動物絵本を読むことは、実際にペットを飼う前の「模擬体験」にもなります。
絵本に出てくるエピソードを通じて、子供がペットと暮らす際に直面する可能性のあるシチュエーションを疑似的に体験し、準備をすることができます。
例えば、ペットの病気や、散歩が必要な現実など、絵本を通じて親が具体的な話を展開しやすくなります。
動物絵本のデメリット
1. 現実と理想のギャップを生む可能性
動物絵本は物語として美しく描かれることが多いため、子供が「ペットは常に楽しい存在」と誤解する可能性があります。
実際には、ペットの世話は楽しいだけではなく、掃除や病院通いといった手間や負担も伴います。絵本のストーリーだけでは、この現実感が十分に伝わらないことがあります。
2. 命の重さを理解するのが難しい場合も
特に小さな子供の場合、動物の死や別れを描いた絵本を読んでも、命の有限性を実感するのは難しいかもしれません。
具体的なイメージが湧かない場合、絵本が感動的なストーリーで終わってしまい、深い学びに繋がらないこともあります。
3. 親のフォローが必要不可欠
絵本を読んだだけでは、子供がペットについて十分な理解を持てないことがあります。絵本の内容をきっかけに、親が子供に現実的な補足やアドバイスをすることが重要です。
たとえば、絵本を読んだ後に、「この犬の世話をしている人はどんなことをしているかな?」と問いかけるなど、親が積極的に働きかける必要があります。
4. 偏った情報に注意が必要
絵本の内容によっては、特定のペットの種類や生活スタイルだけを強調してしまうことがあります。
例えば、犬を飼う楽しさだけが描かれている場合、子供が「犬以外のペットには興味がない」と思い込む可能性があります。さまざまな種類の動物絵本をバランスよく選ぶことが大切です。
親たちの口コミから見る動物絵本の魅力:リアルな体験談を紹介
動物絵本を子供に読ませた親たちの感想や意見をネット上で見てみると、さまざまな体験談が語られています。
ここでは、その中から代表的な意見をピックアップし、どのように絵本が子供たちの成長や学びに役立ったのかをご紹介します。
「命の重さを初めて知った瞬間に立ち会えた」
ある親は、5歳の子供と『ずっとずっとだいすきだよ』を読んだときのエピソードを語っています。
「最初は、ただ犬が可愛いから読みたいと言っていた子供が、最後の別れの場面で涙を流していました。絵本を閉じた後に『犬もおじいちゃんになるの?』と聞かれ、その時初めて、命の有限さについて話すことができました。」
この親は、それまで子供に「命」について具体的に話したことがなかったそうです。絵本を通じて自然に会話の流れが生まれたことで、子供が命の大切さを考える貴重な機会になったと感じたそうです。
「絵本をきっかけに責任感が芽生えた」
『くまのコールテンくん』を読んだ親子のエピソードも印象的です。
「コールテンくんを大切にする少女の姿を見て、うちの子も『僕もちゃんとお世話するよ』と言うようになりました。それから、家の中でぬいぐるみを育てる“お世話ごっこ”を始めたんです。これをきっかけに、本当にペットを飼う準備ができるか確認できたのは良かったです。」
この親は、絵本の物語を通じて子供の責任感を育てられたことに満足しているようです。また、ペットを迎える前に模擬体験ができたことで、子供の意識が変わったと感じたそうです。
「親自身も動物との暮らしを考え直した」
動物絵本を子供と一緒に読むことで、親自身も学ぶことがあるという意見も多く見られます。
「『おじさんのかさ』を読んで、私も動物に優しくすることの大切さを改めて考えさせられました。普段何気なく過ごしている中で、動物たちがどんな環境にいるのかを子供と話し合い、日常生活での行動を見直すきっかけになりました。」
この親は、絵本をきっかけに動物との共存について家族全員で話し合い、動物に優しい行動を意識するようになったそうです。
「思いがけない気づきが得られる」
ネット上では、「絵本が親子のコミュニケーションを深めた」という声も多く聞かれます。
「『ふしぎなでんしゃ』を読んだ後、子供が『動物も自分の言葉で話せるなら、何を伝えるんだろうね?』と聞いてきました。子供が動物の気持ちを想像する力を持っていると知り、驚きました。」
親自身も、子供の感受性や思いやりに気づく瞬間があり、絵本を読む時間が親子の成長の場になると感じたそうです。
ペットを飼う前に絵本で心の準備を!親子で一緒に第一歩を踏み出そう
子供が「ペットを飼いたい」と言ったとき、それは命に興味を持つ貴重な成長のサインです。ただし、ペットとの生活は楽しいだけでなく、大きな責任が伴うことも確かです。
その現実を親子で学び、理解するための最初のステップとして、動物絵本は非常に効果的なツールです。
絵本を通じて命の大切さやペットとの暮らしの現実を学びながら、親子で話し合う時間を持つことができます。また、子供の感受性を育て、責任感を芽生えさせる素晴らしいきっかけにもなります。
この記事でご紹介した動物絵本をぜひ親子で手に取り、物語を通じてペットについて深く考えてみてください。
そして、絵本の内容をきっかけに親子で話し合い、「私たちの家族として本当にペットを迎える準備ができているのか」を確認してみましょう。
2023年に日本全国で保健所に引き取られた犬猫の数は約5万匹にのぼります。その中には「飼い主の事情」という理由が大きな割合を占めています。